スーザン・A・クランシー 『なぜ人はエイリアンに誘拐されたと思うのか』第4回

Clancy, S, A. 『ABDUCTED』の邦訳版。

性的虐待についての”回復された”記憶の研究を行っていた研究者が、

その”回復された”記憶をより安全に研究する方法として選択したのが、

「エイリアンに誘拐されたと思っている人の”回復された”記憶」についての研究であった。


第3章は、「アブダクションが起きていないとしたら、なぜ、そのような記憶があるのか」について。

その2回目。



催眠療法は、役立たずである上に、”偽りの記憶”を創作する手助けをしてしまう。

そして、その"記憶"は、本物らしく見えてしまう。


催眠療法によって捜索した偽の記憶は、

目の前にいる専門家が、「正しい記憶」として認めてくれる。


そして、それは、取り戻した記憶となっていく。



つまり、誘拐されたと信じて、認めてもらって、正しい記憶となる。




著者は、実際に、新米催眠術師に催眠をかけてもらい、ものの5分で、

「実際には手に入れていないTシャツを着て、時間軸的に行っているはずのないゲームをおこなっている」という

鮮明な偽りの記憶を作る体験をしている。



では、実際に起きたことと、想像しただけのことは、どうやって区別ができるのか?

その鍵は、記憶を獲得した時の情報を、思い出せるかどうかであると著者は説明する。



つまり、本当に体験したことの記憶は、知覚を伴うディテールを含んでいるが、

一方、想像したことは、知ってはいるが、その知識を獲得した際の状況や場所について具体的に思い出せない。



逆を返せば、想像したことでも、具体的な状況をどんどんと加えていけば、

本当のことか、想像のことか弁別が難しくなっていく。



子どものとき、近くのスーパーで試食の台を倒してしまったことを想像してください。


試食を配っているおばさんは、どんな顔ですか? おばさんのつけているエプロンの色は?

何を配っていますか? どんな味ですか? 周りには何人くらい人がいますか?

周りの人は、どんなことを言っていますか? 周りの棚には何が置いてますか?




少し具体的に想像するだけで、現実か空想か分かりにくくなります。

これを催眠状態のときに行い、その空想を、「本当ですよ」といってくれる専門家がいたら、

果たして、その時、現実か空想か、区別がくつんでしょうか。